なんだか外が騒がしい。馴染みの客と入れ替わりに入店してきた初老の男性に尋ねてみると、裏通りで何やら一騒ぎあったらしい。ここのところ物騒な事件が多いというのは新聞で読んでいたが、魔法省のお膝元であるロンドン、しかも人通りの多いダイアゴン横丁で事件らしい事件が起きたことはまだない。大事なければいいがと願いながら、彼女はエプロンを畳んで外に出た。横丁の賑わいは、そのまま店の客足にも影響する。

「おや、ソフィー。今日はもう上がりかい?」
「ごきげんよう、クリス。ちょっと遅めのお昼休みをね。ねえ、なんだか騒がしいようだけど何があったの?」

店のすぐ目の前の通りは取り立てて変わったところもないが、さほど遠くはないところから、人々の慌しいざわめきが聞こえてくる。隣の雑貨屋の主に問いかけると、彼は玄関先を掃いていた箒の尻に顎を載せて、陰気な顔をしてみせた。

「ああ、それがどうも、はっきりしたことは分からねぇが……襲われたらしい」
「えっ?」
「若いのがひとり、オーツ通りのほうで倒れてたとか。俺もさっきの客からちらっと聞いただけなんだが」
「襲われたって……まさか、そんな」

近頃紙面を賑わせている、例の黒い集団?
ぞっと身震いしながら、彼女はそれを振り払うように頬にかかった髪を掻き上げた。

「ちょっと見てくるわね」
「ああ、まあ……気ぃつけてな」

気をつけろって、まさかその犯人が、まだダイアゴン横丁に潜んでいるとでも?だがまったく考えられないこともなかったので、思わずポケットの中の杖を確認しながら、曖昧に笑い返して彼女は足早に本通りのほうへ突き進んでいった。

MORSMORDRET

髑髏

「じゃあね、また新学期に!」

キングズ・クロス駅でスーザンたちと別れ、マグルのホームに出る前に九と四分の三番線を見渡してみたが、シリウスたちを見つけることはできなかった。少なからず肩を落としつつ、九番線へと出る。大きなトランクとムーンの収まった鳥かごを引きずりながら、はいつものようにマグルの地下鉄を目指してとぼとぼと歩き出した。去年はアイスクリームパーラーでの待ち合わせだったが、今年は大事な話があるということで漏れ鍋の客室で会うことになっている。ホグワーツ特急の時間に合わせて、フィディアスは先に行って待っているという話だった。

「おい、

キングズ・クロス駅の構内を出てしばらく歩いたところで、は決して友好的とは呼べない声に呼び止められた。振り向く。

「……何か、用?」
「これ、お前のだろう。落としたぞ」

そう言ってロジエールが差し出してきたのは、銀のリングで留められた鍵の束だった。え、と声をあげて慌ててポケットを探ると    ない。私の鍵が、ない!

「それっ!は……ど、どうもありがとう」

こいつに礼を言う日が来ようとは。癪だったけれど、仕方なく頭を下げて鍵を受け取る。それは実家の鍵とトランクの鍵、そして実質的に言えばこちらでの生活には不要な自転車の鍵がふたつ。別々にしているのも面倒だったので、全部まとめて持ち歩いていたのだ。こんな大事なものを落とすなんて!

「ありがとう、これからは気をつけますそれじゃあ」
「おい待てよ」

いつまでもロジエールの鼻持ちならぬ顔と向き合っているのは嫌だったので、さっさと打ち切ってトランクを持ち直そうとしたのだが、すぐにロジエールはそれを制してきた。むかむかと眉根を寄せながら、聞き返す。

「なによ?」
「シリウスと別れたってほんとか?」

ぐああああああうるさいうるさいうるさい!なんだってあんたにそんなこと言わなきゃいけないわけ!

「だったら何か?知りたきゃ本人に聞けば?あんただっていちいちルーサムと付き合ってるだのアシュトンと別れただの赤の他人に干渉されたくないでしょう!何なのよ、あんたシリウスの保護者かなにかのつもり?」
「簡単にいえば、そんなところだな。まあ、別れたんならよかった。言っとくが、あんたたちは似合わないと思うぜ。それじゃあ、また新学期にな。元気で」

にやりと意地悪く笑って去っていくその後ろ姿は、いつの間にかマグルの人混みに紛れて消えた。なんだあいつ!勝手なことばっかり言って勝手に消えて!なにが元気で、よ、白々しい!一年の最後の最後、こんな不愉快な気分で終えなきゃならないなんて最低。早くフィディアスに会いに行こう。

一度ポケットに入れた鍵の束を取り出して、スカートの裾で何度かごしごしと拭ってから、は急ぎ足で地下鉄の駅へと向かった。
地下鉄に乗ってしまえば、漏れ鍋に最寄の駅まではたったの三駅だった。使うのは一年にたったの二回だが、慣れてしまえばどうということもない。目的の駅で降り、エスカレーターをのぼって改札口を出ると、まずマグルの広い大通りに出る。そこから小道に入って五分ほど歩いたところに、魔法使いにしか見えない薄汚れたパブ、漏れ鍋があった。にとっては、すっかり馴染みの光景である。そのドアをひらくと、古い木や混ざったアルコールの臭いに包まれて、カウンターのトムがいつものように出迎えてくれる。

さん、おかえりなさい。今年も一年お疲れ様でした」
「ただいま、トム!トムも毎日ご苦労様。ねえ、のど渇いちゃった。冷たいのなんかちょうだい!」
「はいはい、用意してありますよ。どうぞ」

カウンター席にどさりと腰を下ろしたは、出されたサイダーを受け取って一気に飲み干した。身体の奥を突き抜ける爽快さとツンと走る刺激に、うーん!と高い声をあげる。まだ暗くもならないうちから酒に浸っていた近くの魔法使いと何度かグラスを合わせながら、は先ほどロジエールに声をかけられて催した不快感が冷めるまでひたすらサイダーを飲み続けた。

「そうだ、ねえ、トム。フィディアスが    ええと、私と待ち合わせしてるって魔法使い、まだ来てない?リンドバーグっていうんだけど、部屋をひとつ借りようと思ってて」
「ああ、リンドバーグさんですか?いいえ、今日は見えていませんが」
「……そう。ほんとはもう来てるはずなんだけどな」

そういえばだらしないところのある人だったから、ひょっとして時間にもルーズなのかも。もしくは、単純に仕事が長引いているのかもしれない。壁の掛時計を見上げてしばらく考え込んでから、は脚の長い椅子からひょいと飛び降りた。

「トム、荷物見ててくれる?私ちょっとダイアゴン横丁に行ってくるから、もしリンドバーグが先に来たら、すぐに戻るって伝えといて」
「分かりました。行ってらっしゃい」

はそのまま裏庭に行きかけたが、ムーンがかごの中で不満げにほーほー鳴いていたので、仕方なく外に出してやった。但し、一時間以内には帰ってくること。遅れたら自力で日本まで帰ってくること、としっかり言い聞かせて。ムーンが嬉しそうに飛び立っていくのを見届けてから、もダイアゴン横丁に向かった。フィディアスの誕生日は、七月十九日。まだ先だがその頃は日本にいて会えるはずもないので、今日プレゼントを渡しておくつもりだった。すでに贈り物はホグズミードで準備していたのだが、肝心のカードをすっかり忘れていたのだ。フィディアスが約束の時間に遅れてくれて、かえってよかったかもしれない。急いでカードを準備して、戻ろう。

(誕生日……)

べつに、べつに期待なんかしてなかったよ。完全にOWL試験真っ只中だったし、何よりあんな状態だったし。スーザンやニースたちにおめでとうを言ってもらえただけで十分なんだよもちろん。父さんからカードが届いただけで満足なんだよほんとに。べつにシリウスたちから祝ってもらいたかったなんて、これっぽっちも思ってない。これっぽっちも!
思い返すだけでますます惨めになってきたので、はそれ以上考えないようにした。新学期の買出しにきたときは必ず立ち寄る雑貨屋でバースデーカードを買って、帰り道のアイスクリームパーラーでフロートをつつきながらメッセージを書き込む。これでよし、と。フィディアス、喜んでくれるかな。

フォーテスキューにごちそうさまでした!と声をかけて店を出ると、不意に後頭部に柔らかい攻撃を受けては前につんのめりそうになった。なに!と悲鳴をあげながら振り向くと、ムーンが激しく羽をばたつかせながら必死の形相で何かを訴えかけてくる。どうしたんだろう、こんなに焦っているムーンを見るのは初めてだ。

「ど、どうしたのムーン。なにかあったの?」

問いかけてももちろんムーンが人間の言葉を返してくれるはずもないので、はただ首を傾げるしかなかった。ついに痺れを切らせたムーンが、彼女の首根っこを嘴でつまんでどこかに連れていこうとする。なに!どうしちゃったのムーン!

「ムーン!待ってよ、私これから漏れ鍋に帰らないと、もうフィディアス来ちゃってるかも!」

だがムーンは普段聞かないようなキーキー声まで出して、あくまでをどこかに引きずっていこうとした。なんなの、いったい?ムーン!ちょっと、フィディアス、フィディアスがー!と繰り返しても、まったく聞き耳を持たない。いや、それどころか    
……ひょっとして。

「ムーン……もしかして、フィディアスに何かあった?」

恐る恐る問いかけると、不機嫌そうなムーンの顔がぱっと明るくなった。確信する。ムーンは彼女に、フィディアスの危機を知らせている。森ふくろうの形相は、はっきりとそのことを示していた。

「ムーン!フィディアスがどうしたの?ムーン!」

ムーンはの襟を放して、空高くに舞い上がった。そのままハイストリートを、漏れ鍋とは反対方向に飛んでいく。は逸る気持ちを飲み込んで、慌ててそのあとを追いかけた。何があったの、フィディアス    まさか病気で倒れたとか、暴漢に襲われたとか!ムーンは時々こちらがついてきているのを確認しながら、真っ直ぐに一方向へと飛んでいった。ギャンボル&ジェイプスの悪戯専門店の角を曲がって、裏のオーツ通りに向かって走る。もしも暴漢がいたらどうしよう。ポケットの中の杖をしっかり握り締めて、はそのための呪文を必死に思い起こそうとした。何が使える?でも、フィディアスが敵わないような相手では。いや、そんなことを言っている場合じゃない。病気だったらどうしよう。聖マンゴにどうやって連絡をとればいい?様々な事態をシュミレーションしながら走り続けていると、はムーンが疾走を止めた虚空に浮かび上がる、不気味な緑色の髑髏を見た。
気味の悪い印だ。だがそれ以前に    はその髑髏に潜在的な恐怖のようなものを感じて、その場で凍りついた。なんだ、あれは。髑髏の口からはまるで舌のようにうねる蛇が這い出し、今にも傍らに飛ぶムーンを飲み込んでしまいそうだった。

「ムーン!おいで!」

泣き出したい思いで、は不気味に輝く空に両腕を伸ばした。ムーンがぱたぱたと肩に降り立ったそのとき、やっと目の前に広がる光景を目の当たりにする。虚空に浮かぶ髑髏に目を奪われてしばらく気付かなかったが、影の差すオーツ通りに    男がひとり、倒れていた。
心臓が、跳ね上がって瞬時に凍りつく。そんな……まさか。

「きゃあ!」

聞こえてきたのは、女の悲鳴だった。近くの店内から顔を出した中年の女性が、空に瞬く髑髏を見上げて蒼白になる。そして震える指で口元を押さえながらこちらを見たが、はそんなことには構わず弾けたようにその男のもとへと駆け寄った。うつ伏せに転がったその傍らに膝をついて、手を伸ばしかけるも    ぞくりと全身を駆け抜けた冷気に、一瞬動きを止める。じれったそうにの肩から飛び降りたムーンは、男の顔の下に嘴を突っ込んでなんとか上向かせようとした。
でも、そんなことをしなくても分かっている。これは    フィディアス以外の、何者でもない。

「フィ……フィディアス、フィディアス……ねえ、どうしたの、ねえフィディアス    

やっとのことで上を向かせたフィディアスの顔は、頬と額に少し泥がついていた他はまったくきれいなものだった。まるで、静かに眠っているような。

「……救急車、」

かすれた声で呟いたは、未だに髑髏を見上げて固まっている中年の魔女に顔を向けて怒鳴った。

「救急車!救急車、呼んでください!」
「きゅ……きゅ?」
「何でもいいからすぐにこの人を聖マンゴに運んでください!お願いします、フィディアスを……フィディアスを助けてください!」
「はっ、はい!」

びくりと身体を強張らせて、女はすぐさま店内に引っ込んだ。どうやって聖マンゴ病院に連絡を取るかは分からないが、ここでただ狼狽えているよりは少なくともまともな対応をしてくれるだろう。魔法界の救急処置について学んでおくべきだった。まさか、こんなことになるなんて。

「やだ、フィディアス!フィディアス、目を覚まして……フィディアス!」

一瞬、最悪の事態を考えたが    息は、ある。手を当ててその呼吸を確認した喉は熱く汗ばんでいて、フィディアスがまだ確実に生きているのだということを実感させた。よかった……でも、どうすれば。何があったの、ねえフィディアス。抱き起こしたその身体を揺さぶり、ただ呼びかけることしかできない。その胸に降り立ったムーンもまた、不安げにフィディアスの喉元に羽を摺り寄せた。
見上げた空に浮かぶ髑髏は、まるで不吉に笑いながらこちらを見下ろしているかのようだった。刹那。

「動くな!」

鋭い声が飛ぶと同時、視界に忽然と現れた人影があった。はっとして顔を上げると、確かについさっきまで誰もいなかったはずの場所に、ぐるりとたちを取り囲むように杖を構えた男たちが立っている。何が起こったか分からず息を呑んで硬直するの耳に、続いて聞こえてきたのは別の男の声だった。

「部長、まだ子供です」
「どういうことだ?娘、一体何があった。あの印を打ち上げた人間の顔を見たか?」

振り向いたちょうどのその先に立っていた中年の魔法使いが、いかにも厳格そうな顔付きで聞いてきた。といっても、マクゴナガルのような、にじみ出る温もりはほとんど見受けられない。ただ事務的に問うてくるその口振りにどこか不快感を覚えながら、は反発の声をあげた。

「そんなことより、早くフィディアスを聖マンゴに運んでください!気を失ってるんです、ここに倒れてて……お願いです、早く!」
「なに?生きている?」

先ほどの    部長と呼ばれた男が、空中の髑髏を見上げながら眉をひそめる。生きている?って……なんて不吉なことを言うんだ、この男は!何もかもが不愉快でその男を思い切り睨みつけていると、ある程度の距離をとって周囲を取り囲む十人ほどの魔法使いの中から、ずいぶん若そうな男がひとり前に進み出てきた。他の仲間たちを軽く手で制して、素早くこちらに近付いてくる。が反射的に後ろに身を引くと、彼は『部長』とはまったく違い、こちらを安心させようという気遣いを見せながらフィディアスのすぐ脇に膝をついた。の手をそっと退かし、フィディアスの上半身を抱え起こす。そして慣れた手付きで脈をとると、はっとした面持ちで『部長』のほうに顔を向けた。

「部長、息があります!一刻も早く聖マンゴへ!」
「なに?信じられん」

『部長』は忌々しげにもう一度髑髏を見上げてから、部下たちと思しき魔法使いたちに指示を与えた。フィディアスを聖マンゴ病院に運ぶ役、いつの間にやら遠巻きに集まっていた野次馬たちに事情聴取する役、蛇を吐く髑髏を消す役、証拠採取。そして    

「君は被害者と親しいのかな?君にもぜひ話を聞きたい」

先ほどフィディアスの脈をとった魔法使いが、優しげな、だがどこか厳しさをにじませた声音で聞いてくる。けれどもは他の魔法使いたちに抱えられていくフィディアスを目で追うのに必死でとてもそれどころではなかった。

「それより、私も聖マンゴに行きます、行かせてください!フィディアスが……お願いです、私もフィディアスと一緒に連れていってください!」
「ロングボトム、その娘は犯人を目撃した可能性が最も高い。一刻も早く話を聞くんだ、まだ近くに潜んでいるかもしれん」

厳格そのものの口調で言ってきたのはやはり『部長』だった。思わずかっとなって、そちらに向かって声を荒げる。

「私は誰も見てません!話せることなんか何もないです!それより、フィディアスのところに    
「『』」

不意に名前を呼ばれて、は心臓が止まるかと思った。振り向くと、先ほどの魔法使い、ロングボトムが見つめているのは、その腕に抱えたコンパクトな花束だった。フィディアスの倒れていたすぐそばに、落ちていた。

、というのだろう、君の名前は。ここにメッセージカードがついている。よほど、大切な人だったんだね」

瞼を伏せて、ゆっくりとロングボトムが言ってくる。それを聞いた途端、嘘のように涙が溢れ出てきた。そんな……そんなこと。ロングボトムに手渡されたそれは白薔薇の束で、上に小さなメッセージカードがひとつくっ付いていたが、少しだけ泥がついて擦れていた。

「君の大切な人をあんな目に遭わせた犯人を、我々は捕らえたい。君の証言が犯人逮捕に繋がるかもしれないんだ。彼のことが心配なのはよく分かる。だが些細なことでいい、なにか見なかったか?」

ロングボトムの青い瞳は優しかった。それがことさら涙を誘ってはしばらく何も言えなかったが、胸元の花束をきつく抱き締めて必死にかぶりを振った。

「……ほんとに、何も見てないんです。ムーンが……この子が、必死になって私のこと呼ぶから。だからこの子についてきたら……あの髑髏が上がってて、もう、フィディアスは……」
「なるほど。第一発見者はこのふくろうということか」
「ふん。ふくろうでは何の役にも立たん。つまりは何も見ておらんということだな?」

どうしていちいちこうも癪に障る物言いしかできないのだろうこの『部長』という男は。

「だからさっきからそう言ってるじゃないですか!」
「結構。ロングボトム、その娘はお前に任せた。ベイリー、ダルトン、お前たちは念のため周辺の警戒に当たれ」
「はい、分かりました」

彼らのやり取りを見ていると、この『部長』がこの場に現れた魔法使いの中で最も地位が高いということは一目瞭然なのだが、はどうしてもその男の言うことを聞く気になれなかった。だがこちらが何か言うよりも先に、男はバチンと音を立てて姿を消してしまった。なんだ、あれ……まさかあれが、噂に聞く『姿くらまし』?毎年、六年生や七年生が苦戦している。私は誕生日が遅いので、七年生になってからだろうが。
仲間たちのいなくなった裏通りを慎重に見渡してから、ロングボトムは穏やかな眼差しでの肩にそっと手を添えた。

「混乱させてすまなかったね。聖マンゴ病院まで送ろう。それから被害者のこと、そして君のことも少し聞かせてほしい」
「……でも、私ほんとに何にも知らないんです」
「いや、事件のことはいいんだ。こちら側でしっかり調査する。君たちの身元を把握するのも我々の仕事なんだ」

我々?そういえば私、この人たちのこと知らない。

「あなたたちは……一体、誰なんですか?」

嗚咽を飲み込みながらなんとか問いかけると、彼はそこで初めて自分たちの至らなさに気付いたような顔をした。ローブの胸元につけたワッペンを示しながら、

「ああ、すまない。所属を明らかにしていなかったね。ますます混乱させてしまったと思う。私はフランク・ロングボトム、魔法省魔法法執行部の闇祓いだ」
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(08.07.22)
トムのキャラクターが定まらない…!