「わー!ソフィー、ありがとう!それじゃあ、遠慮なく」
「あら、この子ったらまだ食べるのね」
「パット、今日は私の奢りだから、気にしないで。ジェーミー、これが本当のトルコの味なんだから、心して食べなさいよ。そこいらのクルミケーキとはわけが違うんですからね」
パトリシア・ポッター。私の自慢の友人は、今、愛する家族と共に私の店に来ている。夫ナサニエル・ポッターと、一人息子のジェームズ・ポッター。ジェームズは今年から、イギリスで最高峰の魔法学校ホグワーツに入学することになっていた。
ジェームズは幸せそうにケーキを頬張っていた顔をしかめ、恨めしげにこちらを見上げてくる。
「ジェーミーって……もうやめてよ、それ。僕だっていつまでも子供のまんまじゃないんだ」
「へえ、しばらく見ないうちにずいぶん偉そうなこと言ってくれるようになったじゃない。どう子供じゃなくなったって?うん?」
「そりゃあ……うるさいな、だからいろいろだってば!」
「ふーん、いろいろ、ね。そういうことはそうやってすぐに大声出したりしなくなってから言ってほしいわね。ね、ジェーミー?」
「ぼ、僕だって……ここにシリウスがいたら
咄嗟にジェームズの口から飛び出した名前に、彼女は腕を組んだままきょとんと目を瞬いた。
「シリウス?」
「そう……シリウス。ほら、前に話したこと、あるでしょう?タイラーのピアノ教室で知り合ったっていう」
「ああ、あのブラック家の。その子がどうかしたの?」
ブラック。シリウス・ブラック。名高いあのブラック家の長男だが、純血の家系とおさらばしたポッター家のジェームズとどういうわけか馬が合ったらしい。ジェームズは程なくしてマグルのピアノ教室に移動したため、ここ数年は会っていないようだったが、二人とも同い年なのでこの九月から同級生になるだろう。その話はジェームズからもパトリシアからも聞いたことがあった。
困った顔で頭の後ろを掻きながら、ジェームズがぶつぶつとうめく。 こちらはヤシロのオリジナル小説『ストレート・ライヴズ〜蒼き石の物語〜』をご購入くださった方への御礼小説の一部抜粋です。通販方法はこちらのページをご覧ください。全体をHP内で公開することはありません。